香港デモー卵と壁の戦い


以下の文章は香港在住のTangさん(仮名)が、日本語で書いた香港の現状報告だ。事情があって本名を書かない。また、Tangさん自身のSNSあるいはネット上のアドレスが明らかにならない方が(当面は)いいだろうと考え、ご本人とも相談の結果、Eaphetのブログや、私(阿川)のアドレスなどを使って報告をしていくことにした。(ここまで阿川記)

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香港デモー卵と壁の戦い by Tang

 現在(18/11/2019 21:55)、香港理工大学の状況は膠着のままだ。この数日間、香港警察は理工大学を包囲し、中にいる学生と対峙。警察は今朝から「理工大学から出てきたものは身分問わずに逮捕する」と宣言した。それから現場にいるファーストエイドを拘束し、大学の出入りをすべて封鎖した。学生たちは水、食料、救急用品が不足したまま、警察側に抵抗している。

 反送中(犯罪者引き渡し条約)デモは既に5ヶ月も続いている。今日の理大の状況はおそらく運動初期の誰も想像した事もない、そして誰も望まない展開だ。

 二百万人のデモを果たした運動初期は、多くの香港市民は「和理非」(和平・理性的・非暴力的)をモットーに、公開な集会やパレートの形でデモを行っていた。しかし、その声は政府に届いていなかった。訴えが正視されないまま、鎮圧の武力レベルは益々エスカレートしていた。2014に起きた「雨傘の革命」はまさに和理非の理念を貫いた抗争だった。だが、雨傘の革命は最終的に失敗という残念な結末を迎えた。今も、デモ集会も警察の鎮圧によって、段々影響力を失っている。失敗を繰り返さない為、そして日々エスカレートしている警察武力に対し、一部のデモ参加者は「勇武派」と名乗り、警察の鎮圧を対抗しようとしていた。それがいま、抗争が「和勇並行」の状況に至る経緯だった。

 2014年の雨傘の革命は失敗の結末を迎えだが、たくさんの人たちの心に中に火種を残した。雨傘の革命は多くの香港市民にとって公民覚醒のきっかけとなった。当時テレビを通して見ていた人も、現場にいた人もおそらく2019年6月16日の二百万人行列の中にいるのだろう。それも今回の反送中運動が学生だけでは無く、年齢、業種の人たちが参加しているかの原因かと。

 なぜ反送中立法に反対するのか。まずは銅鑼湾書店失踪事件から説明しよう。2015年10月、銅鑼湾書店の持ち主および店員総計五人が、次々と失踪した。その中に李波、つまり銅鑼湾書店の経営者は香港境内で失踪した。その後、五人は中国大陸まで連れ込まれ、政治機関に監禁されたと判明された。しかし、中国の法執行機関は、香港での執行権はまずない、逮捕権も勿論ない。それは「一国二制度」を元に、中国の法律は、香港では適用しないからだ。しかし、銅鑼湾書店失踪事件は、中国の法執行機関が保証を破り、香港にいる政治異見者を攫い、中国に連れ込んで監禁する実例となった。送中法の恐ろしさは、以上の行為が「合法的」になるのだ。犯罪者引き渡し条約の皮を被った、政治異見者の声を消すための手段でもあった。

 明らかに「一国二制度」を違反した条約に、市民は反対の声を上げた。条約撤収の要求に対して強硬な態度を徹底した政府に、市民「五つの訴え」(五大訴求)を提出した。その中の一つが、「双普選」。普通選挙を通して、一人一票の形で行政長官を選定する権利を求めている。なぜ、普通選挙を行う必要性があるかと言うと、本来なら、施政失敗した立法委員及び行政長官への有効的なパンチは、市民の一票で降板させる筈だった。だが香港市民にその権利は一切なく、行政長官は中央任命に近い形式で選出されている。22年間、香港はずっと住宅不足、公営医療資源不足、貧富格差などの問題に直面している。しかし、政府はそれらへの有効的な解決策を提出していなかった。反送中デモ期間、政府は市民との交渉のチップとしては、ずっと放置していた仮設住宅政策を持ち出した。だがそれだけではデモの音消しにはならない。反送中デモの背景は、長い間香港市民が政府への不満と不信感、及び香港の環境への絶望感が重なっているものだった。引き渡し条約は引き金として作用した。臨界点に達した不満が爆発、反送中デモが二百万人参加の大型デモとなった。

 世界は今回のデモを注目すべきだ。特に亜細亜圏内にある国家たち。なぜかと言うと、中国の経済的な実力が飛躍的に上がると共に、中国で取引や投資し始めた海外資本がどんどん増えている。しかし、共産党政府はそれを切り札として、無理矢理に企業に自分政治主張をハイジャック。簡単な例を挙げるとしたら、台湾企業がもし中国に「一個中国原則」を反した言論を公開したら、あっと言う間に封殺される。2014年に成立した「一帯一路(OBOR)」という、中国は東南アジア、南アジア、アラビア半島沿岸部、アフリカ東部まで貿易関係を結んだ。今この政策に参加している国と地区は総計137個。その中の多くは発展途上国であった、中国は経済や基礎建設の支援を理由に、国々にある膨大な債務を負わせ、これらの地区に大きな発言権を得ている。貿易市場の開放は勿論、政治的立場、及び軍事的戦略利用も中国政府も思うままに振る舞う事ができる。この様な策はこれから中国の膨大な経済成長により、様々な国にコピーアンドペーストされて行くに間違いない。

 もう一点は、中国に現在進行形に起きている人道的危機。ニューヨーク・タームズは11月16日に、手に入った新疆ウイグル再教育キャンプに関する文書の一部を公開した。文書によると、政府は就職教育の名義で新疆ムスリムを大量に再教育キャンプの中に監禁し、子供たちは官員の監視の元に置いているだと。ウイグル人の宗教であるイスラム教を更正すべき邪悪な思想、病気だと称し、教育キャンプは思想の病気を治す為に設けたと言っていた。実際、2018年から、新疆には沢山の学校や農地だった筈の土地の上に、再教育キャンプが建設されていると確認された。大人と子供を隔離、再教育キャンプに閉じ込み、思想の再教育を施していた。キャンプから脱離した女性は、政府が再教育の名を借りて、中にいるウイグル女性に性的な暴力と虐待を施行したと指摘した。器官売買の疑いもある。これは中国繁栄な経済発展の背後に、実際起こっている宗教と人種迫害の事実でもある。世界はこのような悪行を行っている政権に沈黙の態度を取り、目を逸らすべきでしょうか。

 デモ進行して5ヶ月も経ったいま、警察かデモに参加した市民への暴行はある意味、政府を反対する市民に怯えさせる、黙らせる為のものだった。合法的な集会に乗り込み、市民を駆逐し逮捕する。デモ参加者を実弾で撃ち、四権をもつ記者を威嚇、カメラを止めると強要、故意的に銃で狙う、レスキュー隊の人命救助を妨害するなどの行為以外に、拘置期間の被疑者へのレイプと虐待を行なっていたという指摘もあった。それを公開的に指摘したのは、被害者である中文大学学生呉氏だった。呉は、男女問わず、自分以外にも同じ目に遭ったデモ参加者が多数いると公言した。

 9月に、という15歳の少女の遺体が発見された。警察はの死が自殺だと主張しているが、は生前、多数デモ活動を参加していたため、この件に疑い持っている市民は沢山あった。疑点はまず、水泳が非常に得意はなぜ全裸で海で溺死したのか。それからが学校から出て、発生地点だと言われている浜辺公園の途中に、目撃者は誰一人もいなかった。その浜辺公園は普通、夜でも釣り人が沢山いるので、自殺者が出たら通報される筈だった。しかも、の携帯電話の中にあるsimカードが無くなった。様々な疑いに対し、死体も早々に火葬された。の死因は実は警察が参加者への迫害によりのものではないかと、沢山の人は疑問を持っている。11月にの母だと似たように容姿を持つ飛び降り自殺者の写真がネットに出回り、ネット上では大騒ぎになった。

 デモ参加者たちは逮捕される時、記者カメラに向かって、自分のID番号とフルネームを叫ぶ。民間組織や弁護士に助けを求めるのが一般だった。いつからか、最後に必ず「私は決して自殺しません」の一言を加えるようになった。自殺死の偽装をした殺人、それが今香港のデモ参加者の一番怯えているもの、そして社会に蔓延する一種の恐怖だ。政権は、現代社会では保障されている筈だった言論の自由を香港から奪い取ろうとしている。法が守っているのは市民なのか、それとも一つの政権なのか。香港市民と政府との対抗はまるで、卵と壁との戦い。我々は今、世界に助けを求めている。

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