米国議会による魔女狩り―トランプ勢力の空威張り

米国下院で「大学キャンパスにおける反ユダヤ主義と過激な示威行動」について公聴会が開かれた。12月5日午前中に証言に立ったのは、ハーヴァード大学学長のClaudine Gay氏、MIT学長のSally Kornbluth学長、ペンシルヴァニア大のLiz Magill学長、アメリカン大学のPamela Nadell教授の4人。大学キャンパスでユダヤ人学生に対する憎悪犯罪、脅しやいじめが「横行している」現状に対して、多様性や言論の自由を標ぼうする「リベラルな」大学当局を「糾弾しよう」という共和党議員たちによってこの公聴会は招集された。招集したのはHouse Committee on Education and the Workforce(教育と労働委員会)―共和党25人、民主党20人で、共和党が多数を占める下院の委員会で、特にElise Stefanik議員がこの「糾弾」を先導した。公聴会の様子はこちらからご覧ください。https://thehill.com/video-clips/4342551-university-presidents-antisemitism-violent-protests-watch-live/

公聴会だから、表向きはもちろん「糾弾」ではなく「事情聴取」という名目なのだけれど、ビデオを見たらわかるように最初から糾弾モードだった。Stefanik議員は、Intifadaという言葉を「ユダヤ人の皆殺しとイスラエルの破壊を意味する」と一方的に定義した上でそのIntifadaという言葉を叫ぶ行為は貴大学の規律に違反しているかどうか答えろとGay学長に迫った。Gay学長は繰り返し、大学内の表現の自由に言及した上で、Intifadaを叫ぶことが大学の規律違反になるかどうかは場合による(文脈による)と答えた。他の2人の学長も同様の答えをした。Intifadaは一般的には抵抗を表すものであってStefanik議員のいうようなgenocideを一義的に意味するという解釈は常軌を逸している。が、そんなことはお構いなしに「あなたは、なぜ表現や思想の自由の陰に隠れて、このような暴力的な憎悪表現を糾弾することに消極的なのか?」と迫るStefanik議員。学長たちが「その表現が糾弾されるべきか否かは、文脈による」と答えると、言質をとったかのように「よくもそんなことが言えたものだ!」と居丈高になるStefanik議員。これは魔女狩りなのか。マッカーシズムの再来なのか。

このStefanik議員、どんな人物かと言うと、https://www.adirondackdailyenterprise.com/news/2023/11/stefanik-backs-trump-24-as-other-republicans-decline/ にあるように、トランプ支持の急先鋒。教育と労働委員会の25人の共和党メンバーの残りがどういう人たちなのか分からないけれど、公聴会での発言を聞くかぎり、トランプ派が勝っているようだ。彼らはユダヤ人差別を本気で心配しているのではなく、ただそれを錦の御旗にして「リベラル」を叩いているだけのようだ。実に醜い。

ペンシルヴァニア大のLiz Magill学長は、公聴会後、辞任を表明した。今、辞任圧力はハーヴァード大のGay学長の両肩に圧し掛かっている。幸い、ハーヴァード大学理事会は圧力に屈することなくGay学長への支持を表明した。https://edition.cnn.com/2023/12/12/business/claudine-gay-harvard/index.html

Gay学長は、黒人女性として初めてのハーヴァード大学学長。その彼女に対して「学長になれたのは黒人だからに過ぎない」「黒人である以外に、彼女に学長になる資格など何もない」というトランプ界隈お決まりの批判がSNSを駆け巡っている。

このままトランプが再度大統領になるような事態になったら、こうした魔女狩りが日常茶飯事となるのだろうか。(村山さたね)

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