78年目の228:こりゃ酷い、台北市立228紀念館

  今年も228日に台北市和平公園内、台北市立228紀念館に小ツアーを組みました。台湾の若者3人、Eaphetの会員3人(Eaphet企画というよりも東海大の「東アジアの民主」クラス企画ですが)で行ってきました。紀念館は三度目の展示改訂を終わって、この日、228分に再開とのことで2時半に待ち合わせて、長蛇の列でしたが参観しました。228日午後228分という洒落のような再開館時間の設定に「そんなことする場所だったかな、ちょっと何かおふざけ?」という印象がありましたが、中を見て、ひどく驚きました。 

  改訂前は放送局時代の遺物、マイクロフォンなど、この場所から台湾全土に呼びかけたんだよという展示が入口にあったのですが、あっさりなくなりました。当時の「物」の展示がなくなって、かわりにパネルで「228処理委員会」についての説明がおかれ、中でも32条の要求などが目につく展示に替わっていました。「32条の要求」は、ざっくり言えば(36日までの)事件のすべての責任は台湾政府(陳儀)にあり南京政府(蒋介石)は事情を知らなかったということを示唆するものと解釈されます。この時点では責任を陳儀までとして中華民国政府には調停者、保護者として台湾を守ってもらいたいという本島人側の意図もあったと言われます。これを前面に出すと、婉曲的ではあっても、228事件に関して「中華民国」を免責する感が出てきます。 

 館内を進んでいくと、事件に至る経緯を時間軸に沿って説明しようとしていた以前の展示とは違って、時間軸を行きつ戻りつのパネル説明が続きます。以前置かれていた日本時代の遺物、国民党歓迎のために台湾人が作ったけれど左右反対だった中華民国の旗、29日に台湾人が行進した台北市内の道路図(以前は床に設置されていた)、たばこ専売制を説明するために置かれていた闇たばこの実物、事件を描いた絵画など、「物的」な展示がほとんどすべてなくなり、パネルに説明文を付けたものが並び、ときどき関連映像が見られるモニターが設置されていました。

  2階には以前、犠牲者を追悼するためのスペースがありました。今回の改訂で、これがなくなりました。(紀念館に言わせれば、なくなったわけではなく形を変えただけ、というだろうと思いますが。) 


  あまりにびっくりしたので2階にいた解説員の人に聞きました。あれやこれやの遺物はどうしてなくなっちゃたんですか?と。その人は日本語の人ではなかったけれど英語ができる人でした。私が疑問を説明すると、私の腕をひっぱって少し小声になって「そうなのよ、私たちも抗議したんだけど、全部なくしちゃったんですよ」と言う。「これじゃあ、実感として事件を感じにくいし、何を伝えようとしてるのか、分からないですよね」と私。彼女は、私の手を引いて、参観者が感想をすメッセージコーナーに引っ張っていくと「ぜひその意見、書いて残してください。私たち解説員が言っても聞いてもらえないけど、参観者さんからの意見なら聞くかもしれないから」と言うんです。私が書いていると彼女は別の解説員の仲間の人と戻ってきて「書いてくれた意見、後で捨てられちゃうかもしれないから、写真撮らせてくださいね。なかったことにされないために」と言われました。で、書いた後、張り出して、解説員の人と写真をとりました。 


 紀念館で解説している人たちは基本的にボランティアです。その中で日本語が達者なTさんに、話を聞きました。Tさんはたぶん70前後、以前のボランティアの世代よりも一世代下の世代で、見たところ今の解説員さんたちは、この世代か、少し下の人が多いようでした。Tさんいわく「私たちも抗議したんですが、とにかく今の館長は聞く耳もたない。これでは何を言いたい展示なのか分からないと思うんですけどね。私に言わせたらセンスがない。」 


 蒋萬安台北市長に繋がっているであろう現在の紀念館館長、もう犠牲者たちの世代はいなくなり、犠牲者家族の声も小さくなってきているから、そろそろ《犠牲者》⇒《虐殺》⇒《国民党(中華民国)の犯罪》という物語に終止符を打てないか考えたのでしょう。馬英久時代改訂もこの方向でしたが、今回は露骨です。 

 公園内では紀念碑周辺の慰霊祭会場はテープで囲いこまれ、警察が民衆を排除していました。式典に抗議者が紛れ込まないよう、周囲に警官が配置され、公園に入るのにも入口が規制されました。待ち合わせた学生たちが「入れる入口」を探すのが大変で、集合時間に大幅に遅れました。公園の周辺でも萬安市長が抗議デモを禁止したのでしょう、3年前なら賑やかだったデモ隊の影も形もなし。ここまでやれてしまうのか 台北市がすることとは言え、頼政権はだまって見ているだけなのか。(阿川記)

 

 

過去記事 

邊走走之228紀念館重新開館之旅⇒ https://eaphet.blogspot.com/2011/03/228.html

混迷する228事件の「今」:66年目の紀念日⇒ 

75年目の228紀念日⇒ https://eaphet.blogspot.com/2022/03/75.html 

 

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