「主権を優先し、仮定のシナリオについて議論しない」

  2025712日付Financial Timesの記事「US demands to know what allies would do in event of war over Taiwan」によると、トランプ米政権の防衛戦略策定のキーマンであるコルビー国防次官(政策担当)が、過去数カ月間の日豪防衛当局者との協議の中で、日豪の防衛費増額とともに台湾有事での役割を明確にせよと迫った。

これに対して7月中旬、オーストラリアのパット・コンロイ国防産業相は「オーストラリアはいかなる紛争にも事前に軍をコミットしない」「主権を優先し、仮定のシナリオについて議論しない」と述べ、米国と中国が戦争状態になった場合でも、オーストラリアが事前に戦闘参加を約束することはないとした。日本の首相は117日、国会答弁で米中が武力衝突したら日本の「存立危機事態」となり得る―つまり、日本は武力介入すると宣言した。2015年に安倍政権が強行採決した安保法制に規定された集団的自衛権行使の条件に沿っての回答だ、と首相(内閣)は主張した。

 1951年に結ばれたANZUS条約(米国・オーストラリア・ニュージーランド間の安全保障条約)には「加盟国の一つに攻撃があった場合、他の加盟国が適切な行動をとる」とあるが、この「適切な行動」とは自動的に参戦するという意味には解釈されない、というのがオーストラリアの答えだった。

 JAXAH3ロケットがまた失敗した。日本最大の武器メーカー、三菱重工政策のロケットに、台湾有事を念頭に従来のGPSを補完するQZSSQuasi-Zenith Satellite System)衛星が搭載されていた。南西シフトと呼ばれる自衛隊の南西諸島への配備、その戦略の中心にあるミサイル戦を可能にするのが衛星システムだ。NHKでは「他国の衛星に頼らず日本の衛星だけでGPSを可能に」と説明しているが、米軍との間に共同利用の契約はないものの米軍も利用することになる。(米軍による)軍事利用の場合は日本政府の管理下でアクセス制限があるとされているらしいが、日本政府が米軍に対してNoと言えるとも思えない。

 「台湾有事」とは宇宙で始まり、沖縄で具現化し、南西諸島で可視化される戦争だと誰かが言った。2015年の安保法制、その前提である集団的自衛権行使、そのまた前提である個別的自衛権、日本中に展開する自衛隊と米軍の軍事基地、そのどれもが憲法に違反、あるいは違反する可能性がある日本。憲法を順守して(?)米国の要求をつっぱねたオーストラリア。いろいろ問題の多いオーストラリアだが、この対比においては立派に見える。(村山さたね)

コメント