小路映画「牽阮的手」と忠信市場

 321聊聊で、忠信市場の「小路映画」に行ってきた。「小路映画」とは、文字通り、路地に銀幕を張って上映する映画(館)だった。上映作品は『牽阮的手(Hand in Hand)』―莊益增、顏蘭權監督、人権医師と呼ばれた田朝明とその妻、田孟淑の愛情物語を中心に、戒厳解除後も続いた白色テロ時代を描いた作品。オリジナル版は4時間ほどあったそうだが、2時間にカットされたとのこと(理由はどうも民進党絡みらしいが、詳細は聞けなかった)。小路に集まった30人ほどの観客たちは、ときに拍手し、ときに涙しながら、路地に吊り下げられた銀幕に見入った。若い人たちが多かった割には“台湾人の経験”をある程度共有しているように見えて、新鮮だった。呼んでくれた李国基先生に感謝。

 小路映画がある元「忠信市場」は40年ほど前から斜陽になり、現在は67軒の店舗が営業しているだけの、幽霊市場だ。しかし、そこに、いろいろな“芸術家”集団や、レスビアン本屋(Eaphetでも何度か情報を紹介してきた「自己的房間」さん)などが(安い賃貸料も影響してか)入ってきて、微妙な活気を感じさせる場所になっている。上映の後、李さんに案内されて、ギャラリーZを見せてもらった。ギャラリーの学芸員、江さんに出会った。江さんは「牽阮的手」を見て、気分が沈んだと言う。「白色テロ時代のことは、何となく上の世代から聞いているし、記憶もあるから…」「もっと怖いのは、こういうことが“あの時代”で終わりじゃなくて、今だって続いてることよね。」ギャラリーの4階でしばし話し込んでしまった。ここから周りを眺めると、みすぼらしい低い建物が集まった忠信市場を、こぎれいなビルやマンションが取り囲んでいるのが見渡せる。「あっちがお金持ち、こっちが貧乏人。はっきりしてるよね。」と李先生。

 江さんと私たちは、次に黒箱(ブラックボックス)と呼ばれる、市場の飲み屋・おしゃべり空間に行って、さらに何人かの人たちと出会い、飲んで喰ってしゃべった。黒箱には狭いがスクリーンつきの映写室もあり、ここで聊聊する可能性も出てきそうだ。―忠信市場は台中美術館のすぐ前にある。(村山さたね)

コメント