原住民転型正義のゆくえーその①
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| 8/1総督府外で(中時電子報) |
2016年8月1日、中華民国総統、蔡英文が中華民国を代表して台湾原住民族に対して謝罪したことはEaphetニューズレターでも話題にした。その際に「こんな茶番ではなく、実質的な政策を!」と訴えて、謝罪セレモニーが行われた会場の外にピケを張って抗議したパナイ・クスイさんを覚えているだろうか。謝罪セレモニーを終えた蔡は、わざわざパナイさんのいる場所に立ち寄って謝罪が形だけのものでなく実行を伴うものであることを約束したが、その言葉だけではパナイ氏は説得されなかった。
謝罪は蔡英文政権が公約に掲げた「転型正義」の一部だった。過去400年間に渡って移民たちが原住民族の土地だけでなく、その文化と尊厳を奪い、歴史を自分たちの都合に合わせて改ざんしてきたことに対して、まず政府が謝罪し、その後、奪われたものたちを何らかの形で返還あるいは復元あるいは再構築することを通して和解を実現していく―そういう作業を指して転型正義と呼んだ。ただし「何らかの形で」というのは、実質的な何かを約束するものではない。パナイさんが謝罪セレモニーを「ままごと」「茶番」と呼んだ理由はそこにあった。
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| 台湾原住民伝統領域境界法に抗議する人々(自由時報) |
謝罪から半年経った2月14日に行政院原住民委員会は、2007年の調査で確認された原住民族180万ヘクタールのうち、私有地を除く80万ヘクタールについて伝統領域として認定する「台湾原住民伝統領域境界法」を制定した。私有地というのは文字通り私有地なのだが、その多くの部分は台湾糖業(台糖)の名義になっている。台糖はかつての国有会社、いわずと知れた国民党の会社だ。今でも国有的な側面を持っている。911地震後の仮設のほとんどは台糖の所有地に建てられたのは記憶に新しい。それでも私企業なのだからその所有地に国は手を出せない、と政府は言う。180万が80万に値切られた、まったく約束が違う、騙された、と考える人たちがいて当然だ。認定された80万ヘクタールは国の土地で、国立公園などを含む。
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| 警官に囲まれるNapaiさん(Mirror Media) |
伝統領域に認定されることと所有権を持つこととは違う。たとえ所有権は原住民族以外の個人や団体がもっていても、伝統領域に認定されていれば、所有者がその一存で勝手に開発できなくなる(原住民族基本法)。開発にあたっては、原住民族の同意が必要になる。それは大きな違いだ。
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| ブルドーザーで撤去(自由時報) |
『私有地を除外するということは、原住民族から土地を奪ってきた過去を正当化するということだ』ブヌンの人で暨南国際大学の先生をしているサロン・イスハハブダさんは言う。80万ヘクタールを受け入れることは、本来の伝統領域の半分以上(100万ヘクタール)をあきらめること、将来にわたって戻ってくることがなくなるということだ。
2月22日には総督府前でいくつかの原住民団体が抗議の集会を開いたが、少数の活動家からなる「原住民轉型正義小教室」を中心とした総統府前ケタガラン大通りでの座り込み抗議が始まった。アミのパナイさん、同じくアミで映画作家のマヤウ・ビホさん、パナイさんの相棒であるブヌンのナブさんなどがいた。
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| Photo by 舜仁 |
座り込み100日目の6月2日、台湾集中豪雨の中、100名以上の警官が抗議テントを金属製の道路封鎖用のフェンスで封鎖し、抗議者たちを追い出した。ケタガラン大通りの車線を占有し、交通妨害しているという理由だ。警官たちは数時間かけて抗議テントを一掃した。ナブさんは車椅子からこう語った。「あちこちで洪水になって大変なときに、政府はなぜこんなにたくさんの警官を送り込んできたのか。そんなにも蔡英文は私らのことが憎いのか。」
筆者も含め、多くの人々が蔡英文の転型正義への掛け声に期待していた。しかし、同時に、蔡一人の力でどこまでできるのか、疑心暗鬼でもあった。民主化して30年、官僚の世代転換も少なくとも一回二回は起きている。一二回では、しかし、足りないのかもしれない。野百合運動から太陽花運動へと台湾の既得権層の政治意識は変わったといえば変わってきたが、それも大陸に対する被害者意識から逃れられておらず、自分たちを加害者とする転型正義の実現には非常に鈍感だということなのだろうか。(Awil Kazuo)






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