アフガニスタン撤退、8/16バイデン演説全文訳
2021年8月16日 カブール陥落後、丸一日の沈黙があり、メディアと人々のフラストレーションが爆発しそうになった二日目にバイデン大統領が国民に向けて談話を発表。以下はその全文翻訳。原文はNY Times 参照。【 】は翻訳者の注。
(https://www.nytimes.com/2021/08/16/us/politics/biden-taliban-afghanistan-speech.html)。
今日は、アフガニスタンの現在の状況、先週から起きている出来事について、そして、われわれがこの事態の急展開にどのように対処しているかについて、お話します。
我が国家安全保障チームと私は、アフガニスタンの状況をつぶさにモニターし、現に起きた【アフガニスタン政府の】急速な崩壊をも含めたあらゆる事態に対処すべくあらかじめたてられた計画をすみやかに実行に移しました。
実際どのような対応をとっているかについてはこれからもう少しお話しますが、その前に、我々がどのようにしてここに至ったのか、アメリカのアフガニスタンへの利害関心が何なのか、皆さん、思い出してほしいと思います。
20年前にアフガニスタンに行った【went】とき、我々には明確な目標がありました。2001年の911で我々を攻撃した者たちを捕まえること、そして、アル・カイダが我々を攻撃するための基地としてアフガニスタンを使うことが二度とできなくなるようにすること、です。我々はそれを達成しました。アフガニスタンのアル・カイダをかなり撃退しました。オサマ・ビン・ラデンの追跡をあきらめることなく、彼を捕まえました。
それが10年前のことです。アフガニスタンでの我々のミッションが【アフガニスタン】国家の建設であったことはありません。【アフガニスタンに】統一的な、中央集権的な民主主義体制を作ることであったこともありません。我々の国家としてのアフガニスタンへの関心は、以前も今も変わっていません。それはアメリカへのテロ攻撃を防ぐことなのです。
私はずっとこう主張してきました。我々のミッションはカウンター・テロリズムに絞られるべきであり、反政府勢力を抑え込むことでも、国家建設でもない、と。私が副大統領を務めていた2009年に提案された【アフガニスタンへの米軍の】増派に反対したのはそのためです。そして今は大統領として、我々は過去の脅威にではなく、今、2021年の我々にとっての脅威に集中すべきだと確信するのも、そのためです。
今日、テロリストの脅威はアフガニスタンをはるかに超えて転移しています。ソマリアのアル・シャバブ、アラビア半島のアル・カイダ、シリアのアル・ヌスラ、アフリカとアジアの複数の国に支部を作り、シリアとイラクに支配圏を作ろうとしているイスラム国。これらの脅威に我々の注意と資源を振り向けねばなりません。我々は、我々が恒久的な軍事プレゼンスを持たない複数の国において、テロリスト集団に対するカウンター・テロリズムを効果的に行うべきです。必要ならばアフガニスタンでもそうします。我々はこの地域における合衆国への直接的な脅威だけに特化してこれを発見し、即時に、そして必要とあれば断固とした対応をとるためのカウンター・テロリズムの能力を培ってきています。
私は就任にあたって、トランプ大統領がタリバンと交わした協定を引き継ぎました。この協定では、2021年の5月1日までに合衆国軍はアフガニスタンから撤退することになっており、その期限は私の就任後3か月ちょっとでした。トランプ政権中に、すでに在アフガニスタン合衆国軍は約15,500名から約2,500名にまで減っていました。一方、タリバンの軍事力の方は、2001年以降最大になっていました。
皆さんの大統領として私には、この協定通りに進めるか、あるいは”春の戦闘”のただ中で【気候と経済の関係で毎年、4月ごろから一年間の戦闘が10月ごろまで展開され、これがアフガニスタン戦争で繰り返されてきた:訳者注】タリバンとの戦闘に戻る準備をするか、という二つの選択肢がありました。5月1日を過ぎたら停戦はありません。5月1日を過ぎたら、我々の兵士を守る協定は存在しません。5月1日を過ぎたら、アメリカ人の犠牲者を出さずに安定した現状を維持することはできなくなります。米軍撤退協定を進めるか、紛争を激化させて何千ものアメリカ兵士をアフガニスタンの戦闘に送り込み、紛争をさらに次の10年間続けるか、の二つから一つを選ばねばならなかったのです。
私の自分の決断に何の疑念もありません。過去20年で、私は合衆国軍が撤退するのにちょうどいい時期などというものはないということを学びました。我々がまだそこにいるのはそのためです。我々にははっきりとリスクが見えています。あらゆる事態に対応できるよう準備もしました。しかし、私は皆さん、アメリカの人々に、常に正直であるとお約束しました。
実は、事態は我々が予測していたよりも速く展開しました。何が起きたのでしょうか?アフガニスタンの政治リーダーたちは職を放棄して国外に逃亡しました。アフガン軍は時には戦闘も行わないまま崩壊。先週の出来事の展開は、アフガニスタンへの合衆国軍の関与を終わらせることが正しい決断であったことを確信させてくれました。
アフガン軍が自分たちで戦おうとしない戦争でアメリカ兵が戦って死ぬのはおかしいですし、そうすべきではありません。我々は1兆ドル使って約30万の兵士を訓練し、強力な装備を与えました。驚くほどの装備です。NATO同盟国の多くよりも大きな軍事力です。必要な道具はすべて与えました。給料を払い、タリバンにはない彼らの空軍機の整備も行いました。タリバンは空軍をもっていません。我々は【戦闘において】空からの援護も行いました。彼らが自分たちで自分たちの未来を決定する機会をすべて与えました。我々が与えることができなかったのは、その未来のために戦おうとする意志でした。
非常に勇敢で有能なアフガン特殊部隊やアフガン兵士もいます。しかし、今アフガニスタンがタリバンに対して現実的な抵抗をする力がないとすれば、合衆国軍が駐留を続けたとしても1年後、5年後、あるいは20年後にその力をもつだろうとは考えにくいのです。
私はこう信じます。アフガニスタン自身の軍隊が立ち上がらないのにアメリカ軍に戦えと命じることは間違っている、と。アフガニスタンの政治リーダーたちは協力して人民にとってのベストを作り出すことができませんでした。ここぞというときに国の未来について交渉することができませんでした。合衆国軍がアフガニスタンにいて彼らに代わって【タリバンとの】戦闘を引き受けているかぎり、彼らは決してそうしたことをしないでしょう。そして、我々の本当の戦略的競争者、中国とロシアは、合衆国がアフガニスタンの安定化のために何億ドルもの費用と資源、注意を向けることを歓迎するのみです。
6月にガニ大統領とアブドラ議長をホワイト・ハウスに招いた際、そして7月にガニ大統領と電話で話したときにも、我々はとても率直に話し合いました。合衆国軍が撤退した後、アフガニスタンが彼らの内戦を戦う準備をどうするべきかについて話し合いました。政府内の汚職をなくし、アフガン人民のために機能する政府を作るにはどうしたらいいか。アフガンのリーダーたちが政治的に団結する必要性について広範に議論しました。リーダーたちは、このすべてに失敗しました。私はまた彼らに外交手段をもってタリバンと交渉し、政治的な落としどころを模索すべきだと言いました。私のこのアドバイスはきっぱりと拒否されました。ガニ氏はアフガン軍は戦うと主張しましたが、彼は明らかに間違っていました。
そういうわけで、私は再び、我々は撤退すべきでないと主張する人々に問いかけなくてはならなくなりました。後何世代にわたってアメリカの娘たち、息子たちをアフガニスタン軍自身が戦わないアフガニスタンの内戦に送りこめと言うんですか?あと何人の命が、アメリカ人の命が失われなくてはならないのですか?アーリントン墓地にあといくつの墓標を立てればいいんですか?私の答えははっきりしています。我々は過去に犯した誤りを繰り返さない。合衆国の国益に沿わない紛争において無期限に現地にとどまり闘い続ける誤り、外国の内戦にあえてリスクをしょって関わっていく誤り、際限なく合衆国軍事力を使って一つの国を作ろうとする誤り、こうした誤りを繰り返している暇はないのです。世界には我々が無視することのできない重大な問題があるのですから。
これが私たちの多くにとってつらいことであることもまた認めなくてはなりません。アフガニスタンで我々が見た光景は、特に退役軍人や外交官、人道支援者など、アフガニスタンの人々のために現地で働いたことのある人たちにとって衝撃的な光景でした。アフガニスタンで愛する人を失った方々、同地で我が国のために戦ったアメリカ人の皆さんにとって、今回のことは深く、深く個人的なショックです。私にとってもそうです。
私はこれらの問題についてずっと考えてきた一人です。この戦争中、戦闘が進行中のアフガニスタン全土を回りました。カブール、カンダハル、クナル渓谷。4回、現地に行きました。人々に会いました。リーダーたちと話しました。合衆国軍兵士とも一緒に過ごし、アフガニスタンで何が可能で何が可能でないかを実感として理解しました。今、何が可能かということに集中しましょう。
アフガン人民へのサポートは続けます。外交を通して、我々の国際影響力と人道的支援を駆使して続けます。暴力と不安定を避けるためにこの地域の外交と関与を強化し続けます。アフガン人民の基本的な権利のために、女性と少女たちの権利のために、声を上げ続けます。世界中で我々がしているように。
人権は我々の外交政策の中心課題であり周辺課題ではないということを、私ははっきり言ってきました。しかし、それは無期限の軍事介入を通してではありません。それは我々の外交、経済的な方法、そして世界に対して合衆国のこのような行為に参加してくれるよう呼びかけることを通してです。
現在のアフガニスタンでのミッションは次のようになります。私は、合衆国および協力者民間人の脱出を助け、アフガンの協力者と危機に晒されている人々を脱出させるために6千人の合衆国兵士をアフガニスタンに送ってほしいという要請を受け、了承しました。我々の部隊は現在、空港を確保し、民間と軍事両方のフライトを可能とすべく作業しています。航空管制権も掌握しています。大使館を無事に閉鎖し、館員の移動も終わっています。【アフガニスタンにおける合衆国の】外交機能は、現在は空港に置かれています。
これからアフガニスタンに住み、働いていた何千ものアメリカ市民の輸送を行う予定です。そして民間人スタッフの安全な脱出へのサポートも続けます。アフガニスタンで【我々に協力して】仕事をしてきた民間人スタッフです。私が7月に発表した「協力者避難作戦【Operation Allies Refuge】」はすでに2千人のアフガン人に特別移民ビザを与え、その家族と一緒に合衆国に受け入れています。今後、合衆国軍が、さらに多くの特別移民ビザ対象者とその家族をアフガニスタンから脱出させるべく援助することになっています。
我々はさらに、我々の大使館のために働いてくれたそのほかのアフガン人にも難民枠を拡げて対応しています。【我々が援助しなければ大きな危険に晒される】合衆国のNGOや合衆国メディア【で働いた】のアフガン人たち――なぜもっと早く彼らの避難を始めなかったのかという声があることは知っています。それは、これらのアフガン人の中にはまだ祖国に希望をもっていて脱出したくないという人たちがいたことが一つ。もう一つはアフガン政府とその支持者たちが、大規模な脱出は【国の】信用を貶めるのでいかがなものかと、我々をけん制したことです。
アメリカ軍はそのミッションを、いつものように、正確に、効果的に遂行しています。しかし、リスクが伴います。脱出にあたってタリバン側に申し渡しました。もし我々の人員を攻撃したり作戦を妨害したりすることがあれば、我々はすばやく動く。反撃はすばやく、厳しいものになる、と。我々は、我々の人民【our people】を、必要とあれば壊滅的な軍事力を行使してでも守る、と。現在進行中の軍事作戦は短期間のものであり、範囲は限定的でその目的も絞られています。目的は、我々の人民と協力者を、できるだけ早く安全に脱出させることです。このミッションが終了すれば、撤退は完了です。アメリカの最長の戦争を、20年に渡る殺し合いが終わりになります。
我我が現在目にしている一連の出来事は、いくら軍事力を投入しても、歴史上「帝国の墓場」として知られるアフガニスタンに、安定的で統一され、安全なアフガニスタンというものを作ることはできないという悲しい証左となっています。今起きていることは5年前に起きてもおかしくなかったし、15年後に起きたかもしれません。正直にこう言わざるを得ません。過去20年間に我々のアフガニスタンでのミッションは多くの過ちを犯した、と。
アフガニスタン戦争が始まってから、私は4代目の大統領になります。民主党が二人、共和党が二人。私はこの責任を5代目の大統領に引き渡そうとは思いません。もうちょっと時間をくれれば何とかなる、などとアメリカの人々をミスリードするわけにはいきません。私に課された責任、現在の状況と、ここからどのように先に進むかという責任から逃げるつもりもありません。私はアメリカ合衆国の大統領であり、責任は私にあります。
私は今起きている事実に深い悲しみを覚えます。しかし、アフガニスタンでのアメリカの戦闘を終わらせ、アフガニスタンおよび世界の他の場所でのカウンター・テロリズムというミッションに的を絞るという決断を、私は後悔しません。アフガニスタンでの我々のミッションは、同地におけるアル・カイダのテロ脅威を弱体化させ、オサマ・ビン・ラデンを殺すことでした。我々はこのミッションに成功しました。アフガニスタンの何世紀にもわたる歴史を克服して同国を恒久的に変革し作り直そうとした20年に渡る努力は、成功しませんでした。これまでも私がそう信じ、書いてきたように、そんなことができるはずはないのです。
私は、我々の軍隊に、他国の内戦で無期限に戦い続けろと言うことはできません。犠牲者が出て、一生消えない傷が残り、残された家族が悲嘆にくれる。こうしたことは、我々の国家安全保障上の利益にはなりません。アメリカ人民が求めることでもありません。過去20年間多くを犠牲にしてきた我々の兵士たちに報いるべきことでもありません。大統領に立候補した際、私はアメリカ人民に約束しました。アフガニスタンへの軍事関与をやめる、と。困難を伴い、きれいにはいかず【messy】、確かに完全からは程遠いことになってしまってはいますが【far from perfect】、あの約束を私は守りました。
さらに大事なことは、私はこの国のために働く勇敢な男女に対して、ずっと以前に終えているべきであった軍事行動で彼らの生命を危険にさらしてくれと頼むことはしないと決めていました。私が政界に入った当時、ベトナムで我々のリーダーたちはそういうことをしました。私はアフガニスタンで同じことはしません。
私の決断に批判があることは知っています。それでも、次の合衆国大統領に、5代目の大統領にこの決断を引き渡すより、すべての批判を受け止めようと思います。それは正しい決断だからです。我々の人民にとって正しい決断だからです。国のために生命を賭して戦う勇敢な兵士たちにとって正しい決断だからです。アメリカにとって正しい決断だからです。
ありがとうございます。我々の軍隊に、外交官たちに、そしてこの危機的な状況にあって任務にあたるすべての勇敢なアメリカ人に、神のご加護がありますように。
【翻訳:阿川】

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