フィリピン山岳部の感染拡大

  2018年のツアーで訪れたItogonLoacan。ここではフィリピンの様々な場所から流れ集まった人々が昔の金鉱をまだ掘っている。ここにはかつてBenguet Corporationが掘れるだけ掘って撤退した金鉱があり、そこを金掘り人(miner)の組合が採掘権を交渉して掘っている。2018年時点で約600人が組合員とのことだった(この数字は村にある6つの組合の中で最大のLipmaという組合の数字)。それに彼らの家族が加わると、三倍から4倍になるのだろうか。他の組合がこれより小さいとは言え、全体で数千人の集落になるだろうか。人口調査など行われているとも思えないので、数字は確かには

言えない。住んでいるのは、メイクシフトの掘っ立て小屋だ。衛生的とは程遠い。上下水道施設も見えない。山の斜面にへばりつくように家が並んでいる。こういう場所でコロナが発生すると、一気に蔓延するだろう。

  過去のツアーでよくお世話になったブラカンのNGOのTさんが川べりのsquatter(不法占拠者)の集落に何度も連れて行ってくれた。こないだの台風ではここまで水がきたのよ、とTさんが示したのは人の背の5倍があろうかという大木のてっぺんあたりだった。台風で水が来ると、当然、川べりの家々は流される。もともと違法に建てたもので、ブラカン当局としては繰り返し退去要請をしても出ていかった人々が大量に流されると、これで掃除ができたくらいに考えているのかもしれないですね、とTさんは言う。しかし、ウイルスの場合に同じことは言うまいとは思うが、実際有効な手が打たれているとも思えない。

  Loakanminerたちだけでなく、ベンゲット州の山中の村落に暮らす人々は(ベンゲットのNGOのSさんによると)

1.      コロナを信じていない。ネットもない、テレビもない人たちが大半を占めるため、コロナが世界中で蔓延していることも知らない。

2.      日銭暮らしなのでコロナで陽性になって14日間自宅待機になったりしたら、生きていけないから

3.      感染が仮にわかっても隠すし、病院や保健所に言わない。検査を受けない。

4.      ワクチンも注射というのを、頭から受け付けない。

5.      誰かがコロナで亡くなったとして、通夜や葬式に行かないなんてあり得ない。

6.      死んでも通夜も葬式もやってもらえず、焼かれるなんて考えられない。もし死んでも、順番なのでじたばたしない。

 山の保健所には応急処置のための酸素ボンベがないのでプロパンガスのボンベに酸素を詰めて使っているという話も聞いた。そういうわけで山の奥のほうでじわじわと感染が拡大しているのだそうだ。イトゴンのminerたちは、ロックダウンの下で、穴に入ってこつこつ掘って闇で売るということしかできず、感染対策などどこにもありようがない。

  ドゥターテ大統領もフィリピン政府も、ブラカンの不法占拠者たちが毎年台風で流されるのと同じようにしか考えていないのではないか。ロックダウンしてオンラインになったままのフィリピンの学校だが、山岳地方にはインターネットがない。子供たちはここ一年半、放置されたままだ。都市部の中産階級との間に、ますます教育格差が広がっている。(阿川記)

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