なぜ誰も止めないの?

  ミセス・グリーンアップルというバンドが2024年、大時代な植民地主義丸出しのビデオを作って批判され、謝罪した。奴隷制を肯定するのに等しい酷い内容だった。音楽事務所、広告代理店、いろんな「大人たち」が関わっていながら、なぜ「こりゃまずいよ」と止める人がいなかったのだろう。

 2022年、早稲田大学社会人向け講座「デジタル時代のマーケティング総合講座」で、当時の吉野家常務取締役・伊東正明が、若い女性を対象とするマーケティングについて「田舎から出てきた右も左も分からないような若い女性を、無垢・生娘のうちに牛丼中毒にする。男に高い飯をおごってもらえるようになったら、もう絶対に吉野家には来ない」と言及。彼は、この作戦を『生娘をしゃぶ漬け戦略』と呼び、後日、受講生の一人がネットで告発し、炎上。この言葉が、この日初めて使われたものとは考えにくく、伊藤のいわば持ちネタとして、それまでにも社内外で言っていたはずだ。伊藤さん、それ、社内でも外でも言ったらまずいですよ―と注意する人がいなかったのだろうか。

 2026年、熊本大地震で被災地を訪れた高市(首相)は、自己PRのビデオを撮影、製作してネットに流した。すべてが、いかにも宣伝用に、おいしいところだけ、きれいにBGMもつけてプロが作りました、というビデオだ。 首相、これ、被害が現在進行形で人が死んでいる状況でまずいですよ、逆に好感度が落ちますよ、と注意する人がいなかったのだろうか。長崎で、首相、被爆者の話を聞くときに相手の目を見て耳を傾けた方がいいですよ、と進言する人がいないのだろうか。

 ドナルド・トランプ教祖。あんなこと、こんなこと、やばいですよ、やめといた方がいいですよと進言する者がいたら大統領権限で首にする。批判する奴が大統領権限が効かない範囲だったら圧力かけて失職させる。残ったYESマンだけのエコーチャンバーで、あんなこと、こんなこと、やってもはずかしくない。できてしまう。

 ほうっておいたらおかしいことが、おかしいことでなくなっていく。―そういうのもありね―そういう解釈もあるよね―なんならそっちの方が正しいね―となっていくのだろう(か)。【Awil Kazuo】

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