切れる男たち―暴力専門家たちの専門性
8月10日、ヴァージニア州でICEが市民に拳銃を突き付けて恫喝する事件が起きた。ICEが誰かを乱暴に逮捕している場面に通りかかって、車の窓を開けてICEに“くそ野郎”みたいな、まあ、汚い言葉を投げたわけだ。(She shouted to one of the agents, “Hoe, you bitch!”)そうしたら逆上したICEが車で追いかけてきてその人の車を制止し、いきなり銃を向けて「あんた、我々をひき殺そうとした!逮捕するぞ!」と怒鳴る。その人が「そんな嘘は私のドライブレコーダー見ればすぐばれるよ」と言い返し、持っていたスマホでやりとりを録画していることを示すと、逮捕も何もせずにICEはひきあげていった。
去年、宮古島で市民に詰め寄って恫喝した自衛隊指揮官の事件を思いだす。陸自宮古島駐屯地が新隊員の徒歩訓練を実施中、隊員約20人が、伊良部大橋近くの公共施設 「いらぶ大橋海の駅」の駐車場で休憩。監視していた市民団体の女性二人が電池式のメガホンで『きれいな夕陽ですね、こういう夕陽に迷彩服は似合いませんよ』などと隊員たちに呼びかけたところ、隊長と思しき男性(比嘉隼人)が速足で彼女ら詰め寄り「(この場所でメガホンを使う)許可とってるのか?えっ!こっちは許可とってるんだ!(そういうことしたければ)許可とってこい!」と恫喝した。彼女たちより頭一つ大きい迷彩服の屈強な男性に怒鳴られて、その場では彼女たちは引き下がらずを得なかった。あとでわかったことだが、公共施設「いらぶ大橋海の駅」の管理者も宮古市も自衛隊から同施設の使用許可申請は出ておらず、したがって許可もしていなかった。さらに市民が使用するのに許可は必要ないこともわかった。自衛隊は休憩するために駐車場に赤いコーンを立てて占有していたが、これは許可申請すべきだったにも関わらず許可申請は出ていなかった。
つまり、監視され、メガホンで批判的なことを言われてかっとなって「切れてしまった」隊長が、自衛隊が許可とったかどうかなど知らないにも関わらず(つまり根拠なく)自分たちが正しくて、あんたたちは間違ってるんだと、詰め寄った事件だ。命令し、相手が命令に従うことに慣れている人に、ありがちな切れ方だろう。
ヴァージニアの事件も、宮古島の事件も、両方とも、市民の批判に対して「切れちゃった」男が、持っている力を誇示して「やり返した」事件だ。ヴァージニアの事件はどうなるかまだ分からない(前例から考えるとおそらく不問に付されるだろう)が、自衛隊の事件では、自衛隊からは何の処分もなく不問に付された。市民側からの刑事告訴は、不起訴処分となった。民事は継続しているらしい。
ヴァージニアでも宮古島でも、恫喝された市民は女性だ。武器を携帯し、お上の権威を振りかざす男たちが「女に馬鹿にされて逆上」した。アメリカではすでにICEによって8人の市民が射殺されている。
日本の政権は、日本版ICEに、元自衛官や元警官を採用するそうだ。暴力専門家たちが、なぜ上記のような切れ方をしてしまうのか理解した上で、そうならないような措置を講じる必要があるはずだが、今までのところ、ICE(Homeland Security)も、自衛隊も「切れた男たち」を支持し、応援しているように見える。【阿川】
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公文書改竄をやった財務局も、財務局長も謝らない。検事局も謝らない。首相も失言を謝らない。決して謝らないことを政治信条としている大統領を抱えるどこかの国に追随する人たちばかりが目に付く。