貢寮自救会に聞く「核四、第四原発の現在」


呉会長(左)、楊さん(右)核四前で
今年1月、馬英九が再選を果たし、巨額の核四追加予算が認可された。そうした中で核四反対運動の現在とこれからの展望を聞くため、421日、われわれは貢寮自救会の呉文樟会長、楊火木さん、二人の話を聞きに福隆にお邪魔した。

福島原発事故に救われた第四原発
1999317日に建設が始まった核四の商業運転(商転)開始は、行政院院長呉敦義(次期副総統が民国100(2011)と決定していたところが2010試運転の際、核四は4災を起こした。台湾電力が世界最新と誇るシステムは外国各社の技術の寄せ集めで、ひとつのシステムとして機能せず、2011年の運転開始は無理だということは誰の目にも明らかだった。皮肉なことに福島第一原発事故が、核四商業運転開始の延期にかっこうの口実を与えた。新たな安全対策が必要だから工期を延長する、追加予算は必要だ、と。2011立法院が114億元の予算増加を認可し、さらに今年2012年)馬英九が総統選挙に勝ったとたん217日に563億元の追加予算を認可した。結果、総経費は3300億元に至った。現在は2016年に「商転」の見込みだという
原発は台湾の総電量の16を発電している。しかし台湾では電量2528は使われず蓄電されている。原発を止めても電気にまったく困らない。日本原発の発電量は総電量の31もあるが、311以来、それらを次々に止めて(定期点検後の再稼動を見合わせ)はほとんど動いていないが、それでも何とかなっている。日本にはできるのになぜ台湾ではできないのかと呉会長は言う。

『有台階下』
塩寮(貢寮)反核自救会は23年前に結成され、呉会長は23代目の会長。以前核四周辺住民台湾電力から世帯つき毎月150の電気料金を補助してたが今年から一人につき年間1,600(現金)支給に変わった。住民にとって台電からの直接補償はそれだけだ。核一から核三までの周辺住民の反対運動は盛り上がっているとは言えない。特に核一ではもうすぐ(年限のために)運転停止になるから心配ない、という気持ちもある。核四はこれから運転開始なので、まだ危機感がある。
10年ほど前、当時の貢寮郷郷長・趙國棟さんが核四の建設に対する当地の賛否投票をった。そのときには96%の民が反対票を投じた。今の貢寮では賛成派はほとんど国民党支持者、反対派は民進党支持者というふうに原発問題が“青・緑”対立に置き換えられる(矮小化される)現象が起きている。2012年の総統選挙では貢寮区の11選挙区のうち60%以上は民進党に投票し表面的には民進党(核四反対派)が勝ったわけだが10何年前の96に比べるとその勢力が後退していることが分かる。
 これからどのように戦っていくのか。呉会長は自救会のメンバーで知恵を絞り『有台階下』で戦うという。『有台階下』とは、相手の面子をつぶさないよう、かつしっかり相手のミスを指摘し認めさせる、という意味らしい。総統を替えても、政権の原発に対する考え方が変わらなければ同じことの繰り返しだ。国民党の議員の中にも核四の環境や人体への影響を懸念し、原発ではなく天然ガスを使った発電所に変えようという動きも出てきた。
楊さんや会長さんは、もし第四原発を廃棄することができたら、この広大な土地を博物館に跡地利用しようと提案している。

テロリストなんて馬鹿らしい
核廃棄物は中低レベル放射性廃棄物と高レベル放射性廃棄物に分けられ、中低レベル放射性廃棄物は核一、二、三の施設内貯蔵していたが、蘭嶼に廃棄物処理場を作ってから(1980年代)は、そちらに貯蔵を始めた。燃料棒(使用済燃料)の場合は高レベル放射性廃棄物であるため、冷却させるために核一の冷却池に貯蔵してきたが、1000本の燃料棒の空間として設計された場所に、今その3倍の3000燃料棒が置かれている。それで、乾華渓(核一の東側に隣接する川)河岸まで置いた。そんなところにおいて大丈夫なのか、テロリストが容器を破損したりしてわざと放射能を撒き散らす危険はないのかと質問されても、台湾電力(政府)は「そんな馬鹿なことは考えられない」と一笑に付したという。陳水扁が総統だったとき、核廃棄物を北朝鮮の山の奥に捨てるという話があった。会長さんの話によると、北朝鮮と条件を話し合って契約までしたが、南コリアの反対でその話はうやむやにされたまま、忘れ去られた。ある噂では、陳水扁は北朝鮮に3億元もの資金を援助したその金は闇の中へ消えた。

核四と“水”
核四は総面積480ha、施設使用面積107haと、巨大な施設だ。台湾電力は自然災害時の安全対策として、地震発生後津波が発生した場合は最高8.27mの津波がくると予測し、外壁に高さ12mの防波堤を建設した。原子炉は予測した津波の高さより高いところにあるので、どんなに大きな津波が来ても安全だと断言している。しかし、その後ある研究者の調査は、最大で24.8mの津波が発生する可能性があるとし、その場合防波堤の高さは最低でも10mは必要だと指摘した。もし高さ10mの防波堤をつくるとしたら、1000億元はかかるだろうと言われている。この調査結果に対して、台湾電力は「われわれはアメリカの原子力委員会の安全基準を採用している」「調査結果は妥当でない」と回答。福島原発の場合も当初「津波が来た場合でも安全です」と東京電力は説明していたが、3.11地震の際はこの津波の高さは想定外だったといいわけをしている。台湾で地震が発生し、台湾電力の予想の高さを超えた津波が核四を襲ったら、恐らく「想定外」という、責任感がこれっぽっちも感じられない説明を聞かされることになるだろう。
核四のすぐ近くには市街地へ飲み水を送りだしている水道局があり、もし施設から危険物質が漏れたら…という不安がある。原子炉の煙突は台北の水源である「翡翠水庫(ダム)」から8kmしか離れていない。もし施設が稼働され、煙突から出る排気に含まれる有害物質がダムの水に溶け込んだら、台北に住む人々が飲む水に影響を与えるのは明らかである。それでも台湾電力は『安全だ』と言いきっている。
さらに、台湾電力の作成した施設内外の地図上には、施設付近を流れる小川が描かれていない。その小川と煙突の距離はわずか1.2kmであり、もしこの小川に有害物質が溶け込んだら、ここからも多くの人々の飲み水に影響する可能性がある。きっとその小川は、台湾電力にとって都合の悪いものだったので地図にはあえて書かなかったのだろう。

ネジ交換1本で4500万円?!
核四関係預算はもともと1697億元だったが、ここ数年の間に徐々に増やされ2736億元になり、つい1か月前に563億元が一気に追加され、現在3299億元となっている。しかし、この大量のお金がどのように使われているかは不明だ。楊さんや会長さんはそれらのお金は「官僚たちのポケットに入っている」と言う。たとえば今年、核一の原子炉格納容器を固定している7本のネジが折れていたり、ひびが入っているなどの問題が見つかり、ネジの交換作業が行われた。7本中1本は交換できない状態なので、全部で6本交換したのだが、ここで使われた費用はなんと1億元(約3億円)だったという。1本あたりにかかった金額は、日本円で4500万円になる。ネジの市場価格は2000元(約6000円)。これでは、とても一般の納得は得られない【別記事参照】。「予算は台湾の人々が納めた税金なんだ」と、普段温和な楊さんが語気を強めた。

核四は“専門家”からお墨付きを得た
 去年の暮れに、香港ポリテクなどの原子力発電の専門家チームが核四を視察し、その安全性に“お墨付き”を与えたようだ。招待された“専門家”のほとんどは、清華大学原子力研究所の卒業生だと会長さんは言う。清華大学の同研究所は、19556月に台湾政府内に原子力委員会が設置され(台電にもこれに呼応する組織が作られ)「中米原子力協力協定」が結ばれると同時に、台湾政府の原子力推進政策の最前線を担う研究所としてGE社から実験炉を買って創設されたもので、国策研究所。その卒業生が、現在、香港で「原発専門家」として高給をとっている。その視察で問題なしと言われたから“国際的な基準を満たしている、安全だ”とは、まったく説得力のない話だ。

「一年前の日本関東大地震の後、ある日本人の教授から『将来、すべてを捨て台湾に行くかもしれない、その時はよろしくお願いします。』と手紙がきた。どう返事したらいいかわからなくて、そのまま放って置いてある。」(王永婷)もしメルトダウン級の事故が起きたら台湾は逃げ場がない。それでも台東の達仁郷(新たな廃棄物処理場建設予定地)から基隆の貢寮(核四)に至るまで、台電のデータをそのまま単純に信じる根拠はどこにもなく、疑う根拠はたくさんあるのに、一般の台湾人はいまだに政府台電の発表を信じている。台湾の反核運動も福島事故後多少の勢いをつけたものの、たとえば台中で今年の311日の示威行動に参加したのは数百人。数千、数万の単位にはとても届かない。自救会の戦いはこれからもっと厳しくなるのかもしれない。それでも呉さん、楊さんの表情は明るい。こんなにたくさん問題があって、それらに対して台電(政府)は大衆を説得できる説明も対応もできていない。反対側が根気よく、指摘すべきことを指摘していけば政府も考えを変えるしか選択肢はなくなるだろう…。われわれもそうであることを願うが、もしかしたら政府(台電)にとっての原発事故のリスク計算とは、事故が起きた場合にかかる費用と事故が起きない場合に原発建設と運転全体から得られる利益との差し引き計算にすぎないのかもしれない。こうしたリスク計算には被爆による後遺症や次世代へ引き継がれる内部被爆などは入っていない。なぜなら過去の原発事故においてもこれらは因果関係が(基本的には)認められていないからだ。蘭嶼でも貯蔵されている放射性廃棄物の漏洩と、島に生まれる障害児の関係を台電は否定し「証明できるもんならやってみろ」といわんばかりの態度だ。(67年前の原爆による障害認定でさえ、今でも因果関係の証明をめぐってもめている。日本政府のこの態度を見ると、将来、福島原発関連で必ず起きてくる被爆症への対応、補償が十分なものになると想像することは難しい。)(鄭純如・宮平杏奈・王永婷・張瑜庭・古川ちかし)

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