核四公投の何が問題か?


 2月25日、行政院委員長がいきなり核四公投をぶちあげた。どういう流れでこういうことになったのか、国民はよく分からない。こんなことをしたら万が一つにも建設中止という結論になることだってあるはず。リスクがあるにも関わらず、なぜ公投に? 政府も実は手を引きたい、引きたいけど面子もある、金だって超使いすぎてきた、うまい口実があって止められるのなら止めたい、このまま強引に完成させて事故ったら責任を取らされる…そういう観測もある。しかし、現行の公投法では、公投を成立させるのは極めてむずかしい。何もしなければ、十中八九、公投は不成立で、核四工事は継続されることになる。今度は、しかし、国民の意思で継続したのだから事故ってもみんなの責任、という話になる―そう踏んでいるのだろうか。どちらに転んでも政府が責任を回避できる。「できる」というのが言い過ぎなら、回避しやすくなると言い直してもいい。
ネッシン勉強会で、現行の公投法にどんな問題があるのか整理したので、ここに報告する。

公投法の問題点
1.公投が問うのは『核四停建賛成嗎?』(第四原発建設中止に賛成しますか?)であり、これに対する賛成あるいは反対を投じる。これは公投法そものの問題というよりも、議題設定の問題で、公投を実施する行政院によってすでに決定されている。もし『核四停建賛成嗎?』公投が不成立の場合、建設は続行される。つまり、「建設続行」派が勝利する。

2.現在の公投法では、有権者の過半数が投票しなければ不成立となる。ちなみに、過去回行われた全国性の公投で、成立したものはひとつもない。最高でも2004年の大統領選挙と同時に行われたもので45%。後は26%、35%などどれも過半数に達しておらず不成立。
 成立した上で、賛否どちらかの票数が(投票総数の)過半数に達したら、それが公民の意思表示として効力を持つ―つまり、賛成多数なら「建設停止」、反対多数なら 「建設続行」と思うかもしれないけれど、「建設続行」派は、わざわざ公投に行って「反対」票を投じる必要がない。公投が不成立になれば「建設続行」となる。現在の公投法によって公投を行えば、公投はまず成立しないと考えられ、結果的に「建設続行」派はすでに勝利していると考えられている。
 民進党は公投法そのものを修正しようと、案を出しているが、成立条件を有権者の四分の一とするという案はすでに立法院で否決された。今回の公投が不成立の場合、同じ議題では向こう8年間は再度公投することができない。もっとも近くても2021年の七・八月まで、この議題での公投はできない。

 3.「建設停止」派が勝利するためには、①公投が成立し、かつ②賛成票が総投票数の過半数を占める必要がある。今年2013年の台湾の有権者 数の半数は913 万人。913万人が投票し、その過半数、457万人が「賛成」を投じれば建設停止になる計算。

.今年の夏に予定されている核四公投は、過去の全国性の議題での公投と違って、総統選挙や立法院選挙などとの抱き合わせではなく、単独で行われるため、有権者の過半数が投票する(投票率50%以上)というのは無理だろうと予想されている。 
 先にで触れた過去の公投の中で最大の投票率をマークした2004年の選挙は、阿扁の二期目の総統選挙で、大陸にいた台商たちも飛行機をチャーターして投票に戻ってくるなど熱狂的な選挙だったが、にもかかわらず投票率は45%で、これも過半数に達せず不成立だった。

 5.在外台湾人有権者は投票できない(システムがない)上に、当日都合が悪い人たちが事前に不在者投票をするというシステムもないようだ。ただし、住民票が高雄にあるけど学校や職場が台中だという場合に、台中でも投票できるというシステムは検討されているという。

 以上、現行の公投法が持つ問題点を挙げて見た。これまで民進党が提案してきた修正案はことごとく不成立であり、法律自体の改定が(核四公投に間に合うように)修正される可能性は大きくない。
 
なぜ台湾政府は核四に固執するのか
 日本国が「トイレのないマンション」(核のごみを処理できないのに生産し続けていることの喩)なら、台湾は「トイレのない四畳半」。蘭嶼の捨て場はすでに満杯、80年代に投棄されたドラム缶は腐食が進み、土壌に放射性物質をしみ出させているが政府と台電は認めようとしない。台東南田に建設が予定されている新しい投棄場(処理場、と名付けられており、これは新たな問題を予想させるが詳細は公開されていない)建設が始まって使用可能になったとしてもそこで問題は終わらない。第一から第三までの原発の使用済み核燃料貯蔵能力は順次限界にくる。
 日本国で原発事故が発生したら、原子力賠償法の規定によって事業者に無制限の賠償責任が課せられる。台湾の同様の法律(「核子損害賠償法」1961年発効)では台電の賠償責任は一事業所(原発)につき42億元を上限とすると定められている(第3章第24条)。42億元とは何ともすさまじい低額。この状態で福島級の事故があれば戒厳しても事態を収拾するのは困難になるだろう。
 そういう状態の中で、2001年2月、核四建設続行を決めたときにその条件として「非核体制を最終的な目標とすること」を台湾政府は方針として打ち出した。その方針が転換されたとは(日本国の場合とは違って)聞いていない。にもかかわらず、核四建設が推進される理由は、
①原発大国化を計画する中国市場に参入していくために「原発最新技術」競争から降りられない。
②2001年2月の「非核体制を最終的な目標とすること」 という非核化方針は第四原発建設続行と抱き合わせになっていた。
③(日本国と同様に)産業界に対して原子力エネルギーに替るエネルギーを保証する能力が政府にない。
という三つの大きな理由がありそうだ。工事に参入している企業との契約、そこで大きな利権が動いていること(核四建設、これまでの総額はおよそ3500億元)も確かで、それも大きな理由として上げるべきかもしれないが、それは一過性の問題だろう。(古川ちかし)

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