大正区の沖縄人
どの国でも人種・民族・国籍を混同することが多いだろう。日本も例外ではないだろう。だが、日本でルーツを明らかにして生きられないというのはどういうことだろう。また、差別を恐れ、本名を当たり前に名乗れない、生きるため通名を選ばざるを得ない人もたくさんいる現実は何故だろう。
戦前、日韓合併を行って以来、日本へ来て過酷な差別を受け、厳しい肉体労働の中で辛吟した生活を送り、戦争中に拉致され、奴隷的労働を行い、日本社会にいると差別を受けると分かってるのに、戦争が終わってから何故帰らない帰れないのかと在日朝鮮人の方に問い掛けた時、「帰国するかどうかの考慮・対応時間が短かった」と切なく回答を頂きました。当時朝鮮の政治情勢が極めて劣悪な社会状況を生み出しているので、帰りたくても帰らない方がいいと思われるでしょう。また、既に日本居住が長引いて世代的に継続しているので、朝鮮に帰ってもどうにもならないでしょう。
在日の人自らが自分達の民族的劣等感を日本社会の排他性に帰結する傾向が強いという説がありますが1)、日本社会自身が国籍と民族性を同一視して、民族性は日本民族と一定程度異なる民族的少数者の存在を認めて来なかったことにその原因があります。2)
私がお話を交わした在日朝鮮人の方は本名で自己紹介をし、また朝鮮はいつか統一すると信じて、アイデンティティの重要性を強調しました。朝鮮への帰属意識はないと思いますが、アイデンティティの違いや偏見のため、日本社会は在日韓国人・朝鮮人の歴史と存在を尊重した上で彼らを社会の一員と看做すことはいつまでたっても懸案事項なのだろうかと考えさせられました。
私は留学で一年間日本に住んだことがあると友人に伝えたら、どこですかと聞かれ、沖縄だと回答したら、埼玉の友達が沖縄のことを半分冗談で「沖縄は外国です。日本ではないよ」と言われたことがあります。もう一人東京出身の友達の親族の人が結婚する時、「結婚相手が沖縄の人なんです」と紹介されたことがあります。沖縄は何故格別に強調されるかと疑問に思いました。今回のツアーでは住民の四分の一が沖縄にルーツを持つ大正区を訪ねました。
沖縄を代表するでいごの花、地下鉄工事の残土で作られた昭和山、昭和山に生えたソテツを見ると「ソテツ地獄」時代に出稼ぎで大阪に来た複雑な思い…。毎年エイサー祭り・与那原大綱曳を行う千島公園グラウンド、木津川口で渡し船に乗りながら、先人たちの生活・歴史及び戦世の記憶を後世に語り続けて来た方々の現地案内及びお話をいただくことになりました。
青い海、伝統芸能など、沖縄を見るとき自分の都合のよいように見たい部分だけを私たちは見ていないでしょうか。沖縄戦や基地の話になると、「昔のことだ」「あれは仕方がなかった」と目を背ける私たち、見たくないものを沖縄に押し付け、ただ沖縄を娯楽として消費しているに過ぎないのではないか。
大正区の沖縄人は五十から六十年代に激しく就職差別を受けた時代から通名を使ってきましたが、差別されたくないから同じに見られるように努力しなくてはと思ってきたのかもしれません。しかし違いが対立へのエネルギーを作るのではなく、対等の関係のイメージを描くこともできるはずです。
彼らは今「沖縄が抱える問題を自分のこととして向き合い、沖縄人が沖縄人であることを隠さずに、誇りを持って生きて行くこと」を沖縄にルーツ持つ人に呼び掛けています。
米軍普天間飛行場に隣接する沖縄国際大学に留学した私が九年前のヘリコプター墜落事件発生以来、自分の身近な所で発生したことのため、基地は政治問題だけではなく、生活・暮らしの問題だと思うようになりました。留学後は日本に残らず台湾に帰国しましたが。
人の移動は出稼ぎだけではなく、それ自体が自律的な物ではなく、経済や政治の変更で表れます。日本社会の多数派の日本人に求められるのは、自らの民族的アイデンティティを確認し、かつ異なる民族全てを対等の存在と認める心構えを持つことです。日本民族の根本精神を堅持するとともに、少数民族の固有文化を尊重しなければならないことです。3)
少しでもリベラルな発言をすると在日とレッテル貼りをされ炎上してしまう風潮、皆が怯え、口を噤むようになってること自体があまりにも異常です。全ての文化は本来的に異種混交的であり、従って文化間の境界は可変的であり、文化の発展のためには文化間の交流と対話が必要であるという認識、そして、そのような認識の下で、多様な文化の共存と文化間の永続的な交流こそが国民文化の創造的発展に繋がることが広く理解されるようになるでしょう。外国人を他者化・周縁化することなく、むしろ主流の日本人・日本文化の同質性・固定性を問い直した方が正論だと思います。4)
【注釈】
1)<越境する民―近代大阪の朝鮮人史研究>杉原達 新幹社
2)<単一民族社会の神話を超えてー在日韓国・朝鮮人と出入国管理体制>大沼保昭 東信堂
3)2008年自由民主党外国人材交流推進議員連盟「日本型移民対策の提言」
4)<多文化社会の文化を問う 共生/コミュニティ/メディア>岩淵功一 青弓社
(陳伊品)

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