安全な生活環境への権利 



(原文は2013920日発行、Eaphetニューズレター15号中文版に掲載されたものですが、日本語読者のために翻訳版をここに掲載します。20139月現在の話としてお読みください。編集者)


 福島原子力発電所事故後に台湾移住を決めたUさんの経験を聞くという主婦連盟の活動がありました。それまでは原子力エネルギーについて積極的に関心を払っていたわけではなかったのですが、そこで通訳を担当したことから、原子力のリスクや放射能の怖さに対する認識を更に深めることができました。
  講演は2回行われました。1回目の講演の中で、Uさんは、原子力災害時の日本政府の対応やその対処姿勢について、そして二人の子どもを連れ3人で海外移住に至った心の経緯をお話されました。そこで私は初めて、日本政府に対するマイナスな感情を抱きました。政府を信用するという民族性が関係してか、大多数の日本人は政府が発する情報を全て鵜呑みにしたということでした。原子力事故後、専門家ではない普通の親達が、子の安全な環境をつくるため、屋外で汚染された土地の表面を削るなどして除染活動を行ったそうです。政府は既に問題が無いと言い、住むことも子どもが外で遊ぶことも可能だと。放射能汚染は、そんなに簡単に解決できることでしょうか。事実はそうではなく、政府は事実を言っていないだけなのです。原子力発電所爆発後の放射能汚染はずっと続いていて、2年以上経過した今でもなお大量の放射能汚染水が排出されています。Uさんはチェルノブイリ事故の報告を通して放射能汚染の怖さを理解したからこそ、政府を信用するのではなく、子どもを連れ台湾に渡ることを選びました。生きるため、子どもの安全な未来のために。
台湾の状況というと、3個所の原子力発電所が稼働しており、さらにまだ建設途中の第4原発が不完全な段階のまま、急いで稼働されようとしています。今、私たちの生活は本当に安心できると言えるのでしょうか。日本政府は未だに日本の人びとを安全な方向に導いていないにもかかわらず、台湾政府はその技量があるのか、誰もが疑問をもつところです。
2回目の講演のテーマは、食物の放射能汚染についてでした。日本福島で発生した原子力発電所爆発事故なのだから、台湾にいる私たちは福島に行かなければ、放射染環境にさらされなければ、それで大丈夫なのでは?Uさんの答えはNOだ。台湾には日本からの輸入食品があるからです。遠い日本で起きた原子力事故かもしれませんが、放射能に汚染された食物が台湾にも流通し、台湾の人びとにも影響をもたらすということです。
日本福島原子力発電事故で4つの原子炉が爆発してから、今もまだ蓋がされず、常に放射能は放出され続けている。汚染された水は地下水に流れ込み、日本の西海岸新潟県の阿賀川さえもその影響から逃れるのは難しいのです。阿賀川が日本海に流れ込むのに伴って海域にまでも汚染は拡散し続けています。日本原子力発電所事故から2年後の状況をUさんが報告してくれました。
彼女の話によると、身体に対する汚染というのは外部と内部があるという。外部被爆というのは文字通り身体の外部に汚染を受けるもので、内部被爆というのは微小の放射性粒子がついた埃や塵が食物に付着したり、汚染された埃や塵が空気中に舞うなどして、食物や呼吸から汚染物質が体内に入りこむことによって引き起こされます。内部被爆と外部被爆の相違は、体内に入った汚染物質が体外へ排出される前に身体の中で強烈な放射能を放ち続けるところにあります。摂取した放射能の量が高くなくとも、近距離で被爆を繰り返すことになるため、臓器細胞に影響し癌になりやすくなったりします。放射線の中のアルファ線及びベータ線は身体の中に入った後DNAを損傷させてしまいます。DNAは自然に修復されるけれども、放射線によって傷つけられた範囲が広すぎると細胞は修復不完全になってしまいます。もっとひどいのは、修復ミスで異常なDNAが作られ、細胞分裂を通して複製増殖を繰り返し、癌の発症につながることです。Uさんはできるだけ台湾の人びとは日本からの輸入製品を食べないようにとアドバイスします。日本は汚染され国内で販売できない食品を外国へ輸出しており、台湾も当然その輸出国の一つであるためです。危険性が特別高いため極力控えた方が良いのは、干しシイタケ、日本茶(抹茶)、魚(秋刀魚、鰹等)、産地表示がされていない桃やリンゴ等だそうです。
放射能汚染環境の中、外部/内部被爆どちらにしても、身体はどんな影響を受けるのでしょうか。Uさんの日本の友達も深刻な身体への影響が出ているそうです。
 例えば、もともと軽い症状であった症状が、血液検査で異常が見当たらなくとも急速に悪化したりする。頭部:頭痛やめまい、思考不能、時には興奮や鬱、計算や記憶能力の低下等、各臓器に対する小さい影響がある。視力:低下、視界がぼやける、声帯が激しく痛み、声が出せなくなる、口内炎が繰り返しできる。受けた放射線の量に関わらず、成人か子どもかに関わらず、鼻血を流したり、異常な色をした鼻水を流したりする。歯肉から出血、虫歯、歯が抜け落ちるなど。肺に関しても咳の経常化、色のついた痰を伴う咳。ある時は、乾いた咳、風邪や風邪が治りにくいことを繰り返す。さらに悪いのは、気管支炎、肺炎、喘息につながる。とくに子どもは特に肺炎にかかりやすい。成人と子どももどちらも、心電図検査で異常がなくても心臓の痛み、血圧異常等、症状が表れる。また、息切れがし、前兆なく突然に倒れたり、急死したり。腎臓病、膀胱炎、胃腸の具合が長期的に不調が続き、軟便や日常的な下痢。髪が抜け落ちる、皮膚アレルギーが悪化、傷が治りにくい、目と口の周りに帯状疱疹ができる、皮膚は弱くなり、酷いじんましん。関節や骨が痛み、甲状腺が腫れ、子どもは糖尿病と貧血の罹患率が増加、女性は生理不順、異常な出血、また急な疲労感。被爆し抵抗力が低くなり、このような様々な症状が突如あらわれる。

この2回の講座を通して、私はさらに原子力発電の影響、放射能汚染の怖さの認識を深めました。汚染がつくられたら、その発生の場所に限らず時が経過しても汚染の勢いは止まらず、いつまでも終わりなく私たちの生活に影響を与えます。日本から距離が離れていたとしても、日本の食べ物が台湾に輸入されることで、汚染された食品と接触する機会が私たちの生活の中にあります。その上、台湾政府は日本政府よりも、安全基準を低く定めているため、日本で売れない商品が台湾で売られています。私たちの生活は安全と言えるのでしょうか。 
私はこのまま、沈黙を続けてはいられない。私の周りの汚染の怖さを知らない人達、日本の福島の原発事故から避難してきたこの事を共有して、人伝いに広め、多くの人に原発の危険性をわかってもらいたいです。また安全ではない食品は、本来輸入すべきではなく、政府に対して厳しい安全基準値を求めていくことは重要だと思います。原発が稼働し続ける以上、私たちは放射能汚染をずっと心配し続けることになるでしょう。だからこそ、私たちは安全に生活できる環境を獲得し、積極的に理解を深め声を発していくことが必要だと感じています。(李欣婷、村上生紗訳)




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