蔡衍明と旺旺中時集団―台湾版フジ・サンケイグループに乗っ取られる台湾

まず、4日前のワシントン・ポストの記事を紹介します。訳は荒いですが、村山。

ワシントン・ポスト 2012726

拡大する中国の影響、台湾メディアの独立性に懸念

台湾司法省は、中国寄りのメディアグループによる台湾第二のケーブルTV会社の買収に対して、中国の商業的影響の拡大を懸念する声に押されて、厳しい条件を課した。

国家コミュニケーション局は、中国時報グループが(ケーブルTVを)24億ドルで買収することに対して、水曜夜、許可を出した。しかし、同グループが中国寄りの報道で知られるケーブルニュース局を売却し、地上局でのニュース配信の公平性を第3者集団に審査させることを条件とした。

台湾の他のケーブル局も、反中国発言をするコメンテーターを首にして、自分たちの中国語放送を中国に売れるようにしたいと望んでいる。これまで台独支持、中国批判で売って来たトーク番組が最近中止になった例もある。これは、局側が、中国語によるソープを中国市場に売り込むのに、トーク番組が邪魔になったためと言われる。

ニュース局が6つ、新聞が3つ―その一つを中国時報グループが所有―、23百万人が暮らすこの島にとって、メディアの自律性は重要。事実上の政治的な独立が、中国が63年間分断されてきた島を中国のコントロール下に置こうとする圧力によって脅かされている今は、特にそうだ。批評家たちは「戦いはすでに負けだ」と言う。しかし、国家コミュニケーション局の決定を見れば、まだ結論を出すのは早いかもしれない。

国立成功大学教授、Kuang Chung-hsiangは、台湾メディアの将来を悲観視する。ニュース報道はすでに中国の経済発展ばかりを報道し、人権侵害や政府の腐敗についての報道は少ない。

「中国は、台湾のメディアを操作する必要がないんです。商業的な利害が、そうした政治的な圧力よりも大きな力を持ちますから。」とKuang Chung-hsiang教授。「台湾人は中国を単にひとつの外国とみていて、中国が何をやっているかなんて気にしていない―そう分析する人もいます。しかし、中国の負の側面についての報道が消え去ったという事実は、(台湾の)テレビ局が中国市場を狙って何らかの思惑をもっていることを疑いなく示唆しています。」

中国と台湾の間の商業的なつながりは最高潮に達している。2008年に馬英九が大統領に選出される前からあった中国資本の台湾進攻は、今では台湾の経済を支配するところまで来ている。台湾海峡160キロを毎週何百本も往復する航空路があり、以前は禁止されていた貿易や投資に対する規制も緩和された。

中国での台湾企業の成功者の一人が、中国時報グループトップの蔡衍明。彼は中国食品市場で大儲けした後、4年前に同グループを買収した。

蔡衍明は今年はじめ、ワシントンポスト紙のレポーターの質問に答えて、1989年の天安門広場での民主化デモ鎮圧の際、犠牲者の数は台湾メディアも含めて国際メディアが言うほど多くはなかった、と語った。

台湾第二のケーブルTVシステムである中嘉網路の買収に対して批判的な人々は蔡衍明のこのような発言、そして中国時報グループの報道における中国批判の欠如、グループの旗艦紙である中国時報における中国政府宣伝記事を懸念する。

買収に関して厳しい条件をつけることで、国家コミュニケーション局は、台湾メディアの中に独占的な存在を作らないようにするということだけでなく、こうした懸念にも配慮しているように見える。

しかし国家コミュニケーション局にできることはここまでだ。

二か月前、それまでは台湾独立支持だったSETテレビグループが、人気番組「Making Waves」を放映中止にした。理由は、同時期にSETテレビは中国市場にドラマ番組(ほとんどソープ)を売り込もうとしていたためだった。「Making Waves」のホスト役だったCheng Hung-yiSETテレビに10年務めたベテランだが、解雇された。同テレビの上層部は、この話を否定し、Cheng Hung-yiは健康上の理由で辞職した、と言う。

台北大学のHo Han-chun氏はこの番組の長年の出演者だが、彼によると、Cheng Hung-yiは局を離れる前に「北京を刺激する話題は避けるように」「台湾独立もだめ」「チベットや新彊の政治もだめ」と釘を刺されていたという。Ho Han-chun氏は、Cheng Hung-yiは「私がそうしたいと思っても、出演者にまでそんな要求をすることはできない」と言って、この要求を退けたのだそうだ。

台湾メディアのインタビューに対して、Cheng Hung-yiはこの問題についてはコメントできない、とした。

ある台湾誌は、SETテレビが「Making Waves」中止を決定したのは、主に経済的な理由からだと報道した。2011年、同番組のコマーシャル収入は1600万ドルであったが、中国市場にドラマを売り込むことができればその4倍の6600万ドルの収益につながる、と同誌は報じた。

「こういう計算は危険ですよ」とHo Han-chun氏は言う。「経済的な利益のために、滑りやすい危険な足場に立つってことがわかってないんだから」

「もしSETテレビがドラマ番組の売り込みに成功したとしたら、次に中国が、たとえば台湾選挙のときにちょっと台湾人の意見に影響するような番組作ってよ、なんて言ってきたとき、Noと言えますかね」とHo Han-chun氏は言う。

SETテレビだけでなく、台湾ケーブルテレビのTVBSも大陸に番組を売り込もうとしている。少なくともこれまでは、TVBSの番組が中国によって影響されているようには見えない。

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 中国政府は(今までのように)政治的に圧力をかける必要なんかない、商業的利害がすべてやってくれる… まさにその通りかもしれない。台湾の中にむろん反対意見はある。あす31日には台北で学生たちのデモもあるそうだ。
 歴史修正主義、極右のメディア・グループ、フジ・サンケイグループが、社名をフジ・メディア・ホールディングズに変えて、日本初の「認定放送持株会社」(2007年の放送法改正で巨大メディアが多くの傘下局を擁してメディアを独占することが可能になり、認定放送持株会社とはその特権を持つ企業)になったのも2008年だった。同じ年に蔡が中国時報を買収し、その直後に中国の高官と会見で、「上層部の指示に従い、祖国の繁栄ぶりを大々的に報じる」と約束しているそうだ(→元サイト)。
 フジと旺旺中時集団では政治的な指向性は異なるように見えるが、既得権を持つ階層と癒着して市場至上主義を掲げる点では同じ穴のムジナ。
 大手メディアなんてそんなものさ、誰が彼らのニュースを信じると言うのか…などと言ってはいられない。「子供たち」が真っ先にマクドナルドに取り込まれたように、「青年たち」がスターバックスに取り込まれたように、私たちだって大手メディアにあっと言う間に取り込まれる。あんなもの信じちゃだめだよ、と誰かが言っても「だってニュースで言ってるもん」「天安門は中国政府の責任じゃないって言ってるもん」と口をとんがらせる人たちの顔が今から見えるようだ。

  この問題について、日本の大手メディアの記事はない。この問題についての台湾側の懸念を記事にするだけで中国大使館の怒りを買うというのがその理由?(村山さたね)

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